F.P.ウィルスン「黒い風」<上><下>読了

Black Wind 予想通り昨日の出張ではまともな昼食をとることが出来なかった。朝、長岡駅でサンドイッチを購入しておいて良かった。そうしないと完全に昼抜きというところであった。

 まあ、仕事で行った先は偶然にも10年ほど前に仕事をやった施設。リニューアルの仕事をしたのだが、以前の面影はまったくといってなくなってしまっている…とおもったら、門の横に置いてあるゴミ箱を納めたスチールケースに以前の仕事の形跡が…。
 なにやら、懐かしくもあり、寂しくもあった。

 で、朝一から作業をして昼過ぎには作業自体は終ったのであるが、待ち時間が2時間ほど、さらに帰りの新幹線で約2時間。この時間で一気にF.P.ウィルスン「黒い風」<><>(扶桑社ミステリ)を読み進めることができた。
 この「黒い風」はどうやら扶桑社でも品切れ状態のようで、Amazonのマーケットプレイスで結構いい値段で入手せざるをえなかった。2冊で2000円弱だったかな。
 ひとことでいうと怪作である。前もって書いておくが、中身についてはネタバラシにもなりかねないので、ここでは書かない(細かいことを知りたい人はネットなんかで調べてね)。
 アメリカ人であるウィルスンが、太平洋戦争時期の純粋日本人的なメンタリティ?を描こうとしたこと自体、驚異といえば驚異だ。
 よく、外国人が日本をネタにするとどうも収まりが悪いトンチンカンな部分が出てくるが、これはそんな違和感をほとんど感じることがなく、伝奇モノの許容の範囲で描かれていると思う。
 正直、読んでいる間は、日本人が主人公で、舞台の半分以上が日本なので翻訳物という意識もほとんど感じだった。

 さて、ストーリーは太平洋戦争開戦の30年ほど前から始まる。サンフランシスコで父の命令により暮らす少年大久茂松男、その親友のアメリカ人フランク・スレイター、日本でパワーエリートの道を歩む松男の兄弘樹、そしてその3人の間で奇しき運命に翻弄される女性明子。
 当時の日本人に対する反感と差別をもつアメリカ社会、戦争へ向けて突き進む日本社会、さらに真珠湾攻撃をはさんで戦争になだれ込む日米。
 前記4人の紆余曲折を軸に、影の組織「隠れた貌」の暗躍とアメリカ合衆国の策略を綴った伝奇ロマン。

 日本(厳密に言うと天皇)の敵を駆逐する「黒い風」(元寇の神風もそうらしい)を引き起こす秘法を再び手に入れ、悪しき欧米人をアジアから駆逐し、輝ける天皇統治世界を実現しようとする「隠れた貌」がエグイ。どうエグイのかは読んでのお楽しみ、メンバーやことの進め方、さらに「黒い風」の起こし方?まで、伝奇大作の面目躍如。

 ただ、もっと「黒い風」と「隠れた貌」のオカルティックな部分が描かれるといいかなとも思うし、戦前としてはちょっとだけ時代錯誤(やりすぎ?)と感じる部分もある。
 でも、真珠湾攻撃を挟んで終戦直前までの間をオカルトを調味料として料理した強引な「黒い風」というメニューは、かなり濃厚な仕上がりだといえるだろう。

 <アドヴァーサリ・サイクル>にも見られる複雑なプロット配置は、この作品でも十分発揮されている。ある意味アメリカ人でなければ描けなかった影の太平洋戦争史なのかも知れない。
 ひとこと「怪作」である。個人的には多いに楽しめたとだけ書いておこう。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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そうですよね

いつもご訪問ありがとうございます。
一冊800円で送料を含めて約2000円だったと思います。
昔は古書店でもっと見かけたような気もするのですが…。
ちょっと高い気もしますが、でもなかなか楽しめました。

出た当初に図書館で読みました(^^)

怪作ですなあほんとに。

今では2000円するんですか。100円でいいような気も(笑)。

扶桑社の文庫はたいていそんな気になりますけどね(^^)
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  • Author:KsbcKSBC
  • 不惑の年をとうに過ぎてしまったオヤヂのモノローグ
    日々是、思いのままにならぬことばかり。そんなオヤヂの日々。

    読んだ本、手に入れたCDからフライフィッシング、サッカーなんかについてだらだらと…。
    ちなみにMacユーザ歴は20年ですが、最近はめっきり…。

    読んでいただいてありがとうございます。せっかくですから、何か書いていっていただければ幸いです。
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