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結城昌治『ゴメスの名はゴメス』(角川文庫)読了。

 風邪やら雪やら…書くと書いて書けていなかった少し前に読了もののその六、結城昌治『ゴメスの名はゴメス』(角川文庫)。
 これは昨年の青森出張の際の空き時間に書店でゲットしていたもの、お値段は100円也。

 1962年初出のスパイ小説である。たぶん結城作品の代表作の一つといえるだろう。
 タイトルには、強いインパクトがあって、いつとは言えないが、若い頃からずっと頭のなかに焼き付いていた。全くどうでもいい話であるが、"ゴメス"という名前を聞くと勝手に頭のなかで"…名はゴメス"となるくらいだ。

 舞台はベトナム紛争真っ只中のサイゴン(ホーチミン)が舞台。とにかく当時のベトナムはややこしい、ホーチミン率いる共産主義勢力、フランスが後ろ盾のバオダイ政権が北と南に並び立っている状態。
 さらに、腐敗の進んだバオダイ政権は、アメリカから煙たがられディン・ディエムを大統領に据えることになる。
 そんな状況の中、行方不明となった前任者香取の後を受けて当地に赴任してきた日南貿易の「わたし」。
 香取の身の回りの世話をしていたリエンという若い女、混血ダンサーのヴェラ、向かいのビルの会社の男、同じアパートに住む男…そして自分のアシスタントといった正体の知れない人間たちに、南国の熱気が当時の怪しいベトナムの雰囲気を煽る。
 香取の妻とのただならぬ関係もあって香取の行方を追うのだが…、現地の警察をはじめ、通信社の森垣など関係者たちは皆、探すのは無駄だというのだ。
 そんな中向かいの会社の男フンが、「わたし」の部屋で殺される。さらにあちこち嗅ぎ回る「わたし」を付けていた男が撃たれ「ゴメスの名は…」という言葉を残こしてこと切れる。
 ここからは物語はスパイ・アクションへと突入するのであるが、細かな背景が明かされることはなく、読む側も「わたし」と同じ不安のままフィナーレを迎えるのである。

 255ページとキュッと引き締まった長さの中に、ムッとするような南国情緒とエロス香り、政治情勢不安といった様々な要素が盛り込まれている。

 次は、河野典生『さらば、わが暗黒の日々』。

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そうですね。

こんばんは。
おっしゃるとおりです。
タイトルを頭に刻んだ頃に読んだなら、その良さは分からなかったでしょう。
とても引き締まったいい作品だと思います。

引き続き、この頃のものを読んでいます。今日も西荻盛林堂さんで3冊、600円で
買い込んできました。

No title

ずいぶん昔に読みました。高校ぐらいですので、いまひとつ良さがピンとこなかったのですが、今読めば間違いなく好きな作品になる気がします。
食事もそうですがミステリも、年をくってほんとに好みが変わりました(苦笑)。
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  • Author:KsbcKSBC
  • 不惑の年をとうに過ぎてしまったオヤヂのモノローグ
    日々是、思いのままにならぬことばかり。そんなオヤヂの日々。

    読んだ本、手に入れたCDなんかについてだらだらと…。

    読んでいただいてありがとうございます。せっかくですから、何か書いていっていただければ幸いです。
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